映画『シェイプ・オブ・ウォーター』について("The Shape of Water")

本日は全米で2017年12月に公開され、2018年3月に予定されているアカデミー賞の作品賞にノミネートされている映画『シェイプ・オブ・ウォーター』についてちょびっと話したいと思います。

本作品の舞台は1962年の米国-政府機関のとある研究施設で清掃員をしている発話障害の女性と、同施設に移管された異生物との間で育まれる愛の物語です。と、ざっくり説明をされれば美女と野獣のようなお話かな?と想像するかもしれませんが、確かにディズニー映画のおとぎ話のような展開やシーンも多々あるものの、そこはダークな作品が多い事で知られるギレルモ・デル・トロ監督が脚本制作した作品ということもあり、人間同士のドロドロとした描写・差別や性的・暴力的描写も織り交ざり、それが逆に本作の神秘性を醸し出すのに一役買っているように思います。ギレルモ監督は従来より映画作品の制作にあたり、観客にどうしたら喜ばれるのかといった事は一切考えず、あくまで自身が作り上げたいものを作るというスタンスを取り、娯楽映画や大作といったものには一切興味がないようで、本作も彼の考え方を理解し受け容れてくれたFOX SearchLightだったため制作実現させることが出来たのだとか(ちなみに、彼と同じメキシコ監督のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督が以前に『バードマン』という一風変わった作品を制作した際にFOX SearchLightの理解あるサポートが後押ししたという話を本人から聞いたのも決め手だったそう)。

いずれにしても上述した通り、美女と野獣のような純愛ものを期待するとショックを受けるシーンが幾つもあるため、特に潔癖症の方にはあまりお勧めできないですかね。でもでも何といってもアカデミー作品賞にノミネートされているわけなので、その点だけとっても見て損は無いと思いますよー(笑)。

映画『デトロイト』について("Detroit")

本日は2017年に公開された映画『デトロイト』についてちょっと話をしたいと思います。本作は1967年に実際にアメリカで起こったデトロイト暴動(デトロイト12番街(黒人街)での住民と警察/軍との衝突)の最中、とあるホテルで発生した警察官による三人の黒人青年射殺事件を題材にした映画で、2010年に女性として初めてアカデミー監督賞を受賞したKathryn Bigelow(キャスリン・ビグロー)監督の第三作目に当たります。

移民と奴隷制度を取り入れた事から常に人種差別という社会問題に直面してきたアメリカにとっての一つの悲劇的な事件であり、特に昨今グローバリズムに対する批判や白人至上主義への回帰が見え隠れする世の中で、このような映画を制作した監督に敬意を表したい一方で、少し過剰ともいえる演出(警察官による暴行シーンが延々と続くプロット等)は見ていて心が苦しくなりました。

監督は2014年に発生したファーガソン事件(白人警官が丸腰だった18歳の黒人青年を射殺、不起訴となった事件)等を見て、人種差別と警察の権力乱用に警鐘を鳴らすべく本作を制作する事を決めたのだとか。

ただ残念に思ったのは本作は当初限定公開だったこと。映画ビジネスとして興行成績を気にするのは仕方無いと思うし、基本ドライであって良いと思う一方、本作のような特に現代社会の歪みを露呈してくれる(又は気付かせてくれる)映画はもっと大々的にPRして脚光を浴びても良いと思いますね。

と、いうわけで昨今の人種差別に対する問題意識を高めたい、知識として知っておきたいという方にはオススメの一本となっております!

映画『Star Was 最後のジェダイ』について("Star Wars The Last Jedi")

本日はつい二日前(12月15日)に世界同時公開された映画『Star Wars 最後のジェダイ』についてちょびっと話をしたいと思います。と、言っても未だご覧になってない方も大勢いらっしゃると思うので、ネタバレは一切せずに話をしたいなと。

そもそもStar Warsという映画は全6部作(脚本も手掛けたジョージ・ルーカス監督の当初の話によれば)にもなる宇宙を舞台にした壮大な愛と戦争の物語で、その第一作目がなんと第4部から始まるというユニークな展開だったのもさることながら、胸躍らせるストーリー、魅力的なキャラクター、いつまでも耳に残る素晴らしい楽曲の数々と、子供から大人まで楽しめる世界で最も愛される映画シリーズの一つといえます。

後にディズニーが当シリーズの制作スタジオを2012年に買収、後継シリーズとして発表した新3部作のうち、第二作目にあたるのが今回の『Star Wars 最後のジェダイ』になります。

同作品は週末オープニング興収が後継シリーズの第一作目であった『Star Wars フォースの覚醒』に次ぐ歴代2位と大成功を遂げており、映画評論家からも概ね好評、中にはシリーズ最高傑作といわれる第5部『Star Wars 帝国の逆襲』に次ぐ名作との声もあるようで。

然しながら一個人ファンからすると、全体的な物足りなさ(=ストーリーの広がりの少なさ)を感じるところもあり、賛否両論であろうというのが率直な意見です。

とはいえ、新たなるサーガとして大変新鮮であるし、次世代のシリーズとして十分面白いと思います!これから観るというシリーズファンの皆様、ぜひ童心に帰って楽しんでくださいね☆彡

映画『IT』について("IT")

本日は今年の夏に公開された映画『IT』についてちょびっと話をしたいと思います。

この映画はアメリカのモダン・ホラー小説家として有名なスティーブン・キングが1986年に執筆した同名小説『IT』を原作としたホラー映画で、1990年に映像化されたもののリメイクになります。

舞台はノスタルジックな雰囲気漂うアメリカの田舎町で27年おきに突然姿を現しては住人(特に子供)に恐怖心を植え付け、心が極限まで衰弱した頃合いに体ごと食い殺すという殺人ピエロに翻弄される少年少女たちの物語。

全米公開は9月でしたが、オープニング週末は179百万米ドル(日本円にして約200億円)と、9月の公開映画では興行的に最も成功した映画となりました。

フォーチュン誌やロサンゼルスタイムス紙等も絶賛しており、同じく過去にスティーブン・キング原作のホラー小説を映画化した名作『Shining』や『Carrie』にも勝るほど怖い映画と評しています。

と、その後公開された世界各地でも大絶賛の映画になっていますが、確かに冒頭からのショッキングな映像や、筆者のように心臓の弱い人には少々きついと言えるほど一定ペースで驚かせてくる演出は、確かにホラー映画として一級品と思う一方、やはり2時間ちょっとで原作の不気味さを十分に引き出すまでには至らなかった気がしましたね。その点、1990年に映像化されたものはテレビシリーズとして放映され、ピエロによる恐怖演出がよりゆっくりじっくりと迫る形で、あまりの怖さに当時は道化師恐怖症を引き起こす人が続出する等の社会影響まで出たほどで、筆者も同様の症状になりかけた内の一人です(笑)。

そんなわけでこの映画を観て気に入った方は1990年版も全力オススメしますよー☆彡

 

映画『インセプション』について("Inception")

本日は私の好きな映画TOP10に入るであろう映画『インセプション』についてちょびっとお話したいと思います。

こちらは2010年に公開されたSci-Fiアクション映画で、監督は言わずと知れたクリストファー・ノーラン監督、主演はこちらも言わずと知れたレオナルド・デカプリオです。

この映画は、人の夢の中に侵入し、その人の潜在意識の中に隠れているイメージを情報として抜き取り、それを元に本人にゆすりをかけたり企業利益のために利用したりする仕事を生業とする人々の物語で、話の設定の複雑さもさることながら、夢の中に登場する人の更に夢の中に入る、や、現実世界で亡くなってしまった人に対する強い思いが原因で夢の中にその亡くなった人が現れてしまうという急角度な展開など、一度観て物語の全てを完全に理解するのは大変難しい作品になっています。実際に映画の出演者や制作スタッフも台本の読み込み・内容の理解に相当な時間がかかったのだとか。例えばVFスーパーバイザーのPaul Franklinさんいわく、台本に”夢の中で街が半分に折れるシーン" という一文を読んだとき、映像化はかなり困難になると感じたそうですw。

ゆえにその複雑なストーリーから受けが良くなかった人の話もたまに聞きますが、それを補って余り有る映像美と魅力的なキャラクターの数々、そして物語の全て!(もとい、あえてエンディング以外wと言っておきましょう)を理解した時にやってくる時空を超えたような感覚と心震える感動。これ以上の説明は抜きにして、まだ観てない方はぜひBlu-Rayなどで観てほしいと思いますね!女優のマリオン・コティヤールも個人的にはこの作品が一番美しく知的に見えて◎w^^

映画『ゴッドファーザー』について("The Godfather")

今日は少し(もとい、かなりw)古い映画について話をしたいと思います。

1972年に公開されたマフィア映画の金字塔である『ゴッドファーザー』。NYの裏社会で暗躍するマフィア界に属するファミリー同士の仁義なき戦いを描いた、もう有名すぎる作品ですね!当時この映画が公開されるまでマフィア映画というのは殆ど制作された事がなかったそうで、この映画の大ヒットにより、「マフィアの世界てこういう感じなんだ~」というイメージが出来た人も多いんだとか。

この映画は序盤からラストまで忠誠・裏切り・復讐と、今流行りの北野武監督の映画『アウトレイジ』シリーズに似た男くさい展開が続くのですが、その重厚なストーリーと各登場人物の生き生きとした台詞のやり取りに最初から最後まで引き込まれます!

アカデミー賞も作品賞を筆頭に幾つか受賞したのですが、中でも注目は物語の主人公であるゴッドファーザー(生みの親・名付け親という意味)を哀愁たっぷりに演じた俳優のマーロン・ブランドが受賞した主演俳優賞。驚くべき事に彼は授賞式に参加せず代理人としてネイティブアメリカンの女性を参加させたそうで、ネイティブアメリカンに対する国民的扱いの是正を訴えるためのパフォーマンスだったそうです。映画の外でも男気あふれた良い役者だったんですね。

現代の生ぬるーい映画に飽きた方でまだこの映画を観ていないという方は是非観てみて下さい、これからも50年・100年と残るであろう名作です!

 

 

 

映画『レヴェナント』について("The Revenant")

本日はこれも2年以上前に観た『レヴェナント』という映画についてちょびっと話したいと思います。

この映画は2014年に『バードマン』でアカデミー監督賞を受賞したアレハンドロ・イニャリトゥ監督が手掛けた映画で、アメリカ西部開拓時代がその舞台。毛皮狩猟を生業にしていた白人系ハンター達をガイドしていた主人公が、その途中でグリズリー(大型熊)に瀕死の重傷を負わされた挙句、そんな彼の最期を見届ける役を命じられていたはずの男に、これ以上足止めを食って先住民に襲撃されても面倒だからとトドメをさされそうになった上、それを止めに入った息子まで目の前で殺されてしまうという。

ここまで残虐な行為をしでかした男を決して許せない!と復讐を誓う主人公なのですが、なにせ瀕死の状態であるのに変わりなく、立ち上がって歩くことも出来ないため、最初は地面を這いずりながら移動、しかもそこは真冬の雪山という中で、肉体的・精神的にも既に限界の境地から途方も無い一人旅のスタートを切るわけです。更に更に周囲からも白人を許すまいとする攻撃的なインディアンが事あるごとに主人公(出身はスコットランドみたいです)を襲ってくるわけです。どう考えても無理!どう天地がひっくり返っても無理!と観客は心の中で何度も叫びながら、それでも全編を通して映し出される大自然の壮大な美しさや、主人公の復讐に対する思いと一人の人間として再生していく様子に心を奪われてしまうのです。

この映画で念願のアカデミー男優賞を受賞したレオナルド・デカプリオの好演も見事で、彼のとてつもなく気合の入った体当たり演技にも是非注目してほしいですね!